情熱的氷滑芸術

宇野昌磨 は大物か能天気か!?【グランプリファイナル感想(1),スポーツ雑誌風】

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 SP(Short Program,ショートプログラム)の 宇野昌磨 は,出だしからスケーティングの滑らかさと,音楽との調和が素晴らしく,3A(トリプルアクセルジャンプ)の直前までは「これは神演技になる!」というゾクゾク感に満ち満ちた演技だった。得意の 3A。着氷して成功を確信した瞬間,イーグルから股割きの形で転倒。観ているこちらが「えっ!?」と驚き,宇野 本人も苦笑いどころか照れ笑いするしかないような転倒だった。この転倒がなければSP史上最高スコアも可能だった名演技が,一転して微笑ましくなってしまうのは 宇野 の人柄のなせる業だが,勝負師という観点ではどうなのかとやや不安になる。本当の勝負どころは平昌五輪なんてことは重々承知なのだが,ファイナルという大きな大会で完璧な演技のチャンスが来たのだから,それをきっちり仕留めてほしかったとも思う。結果論だが,ここで仕留めておかなかったことが,優勝を逃す一因になったのだから。

 その点,ネイサン・チェン(米)のSPは,完璧とまでは言えないながらもノーミスできちんとまとめたのが,優勝への布石となった。シリーズ2戦に続く100点超えで安定感が出てきたSPは,チェン が音楽を見事に捉えていて,特にステップの端麗さと力強さは,これぞアメリカ選手という雰囲気にあふれていた。チェン にとっては,SPの安定感が優勝を呼び込んだということになるだろう。

 ただ,チェン はFS(Free Skating,フリースケーティング)が今季なかなか軌道に乗らず,ファイナルでもまだ軌道に乗せることができなかった。注目のジャンプ構成は,4Lo(4回転ループジャンプ)を入れた4回転5種類フルコースではなく,4Lz(4回転ルッツジャンプ)を2本入れるスコア重視の構成にトライした。4S(4回転サルコウジャンプ)が抜けて2回転になったことで,リカバーのために 3A を1本削って 4T(4回転トウループジャンプ)を飛んだ(結果はダウングレード判定)。そこまで4回転を詰めなくても…と思うが,おそらくこれは,4回転ジャンプが抜けた場合の代替策を忠実に実行した結果であろう。3A がそれほど得意ではない チェン にとっては,3A よりも 4T の方が成功確率が高く,スコアも高くなる。また,ジャンプの種類と本数の制約の問題も,2本飛ぶジャンプの種類が 3A から 4T に変わるだけなので,あれこれ考える必要がないという点でも優れた代替策だ。

 チェン の3連続ジャンプも変更された。今までは 4T+2T+2Lo(4回転トウループ→ダブルトウループ→ダブルループ)だったが,ファイナルでは 4T+1Lo+3S(4回転トウループ→シングルループ→トリプルサルコウ)を組み込んだ(結果はサードジャンプが2回転)。後者の方がスコアが高いので,これもスコア戦略の一環だろう。4Lz を2本入れることも含め,ジャンプの精度を考えながら効果的なスコア戦略を練ってきていることが分かる内容であり,単に4回転を多く入れているだけではないところがなかなか強かだ。

 チェン のスコアが伸び悩み,優勝の可能性が高かった 宇野 だったが,まさかの2位だった。わずか0.5点差であり,ミスのどれか1つでも防げていれば良かったわけで,いろいろもったいない点があったが,大きくは2点。1点目は,精度が高く安定していたはずの 4T が2本とも成功しなかったこと。他の4回転ジャンプは失敗してもやむを得ないが,4T は成功する前提でプログラムを構成しているはずなので,それが2本とも崩れてしまえば勝ち目はない。同じジャンプは少なくとも一方を連続ジャンプにしないと減点されてしまうので,4T を2本失敗したことでこの減点が適用され,さらに2本目の 4T は回転が全く足りずにダウングレード(3回転扱い)になってしまったので,それによる点数のロスも大きかった。

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