阿佐智の「アサスポ・ワールド・ベースボール」

拡大するベースボールのネットワーク―2015年世界プロ野球の国別ロースターから9:送出国側からみたベースボールのプロ化の広がり

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 これまでは、受入国プロリーグの国外選手の出身国の分析からプロ化するベースボールシーンにおけるアスリートの国際移動の現状を探ってきたが、ここでは、送出側からベースボールのプロ化が進んでいことを探っていく。  調査時において、世界中のプロ野球リーグには41の国と地域から選手が参加していた(2014-15年シーズン冬季リーグ20か国・地域、2015年夏期シーズン41か国・地域。ちなみに2008年は38か国・地域だった)。以下に、その国・地域を列挙する。  アメリカ、カナダ、ドミニカ、ベネズエラ、メキシコ、プエルトリコ、キューバ、パナマ、コロンビア、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、ブラジル、アルゼンチン、ジャマイカ、ハイチ、バハマ、米領ヴァージン諸島、オランダ領カリブ、日本、韓国、台湾、中国、インド、タイ、ミャンマー、オーストラリア、ニュージーランド、米領グァム、イタリア、サンマリノ、オランダ、スペイン、ドイツ、イギリス、ベルギー、チェコ、リトアニア、ポーランド、モルドヴァ、南アフリカ。   ロースターの確認できた「プロ野球選手」は夏季リーグにおいて、計1万3504人であった(2008年は1万2388人)。そのうち出身の不明な者が173人いたが、その多くはアメリカ人であると仮定すると、確認できただけでも6293人いたアメリカは世界中の野球選手の過半数を輩出していると想定される。以下、選手の出身国の内わけは、ドミニカ(1937人)、ベネズエラ(1143人)、日本(1099人)、韓国(1038人)と続く。日本、韓国は、同じく自国にプロリーグのあるメキシコ、カナダ、イタリアとともに、国際移動をする選手の割合は少なかったが、それに対して、メキシコと台湾は、国際移動率が1割を超えている。これは、両国のプロリーグの報酬の低さと関連するものと思われる。イタリアはメキシコ、台湾以上に選手の報酬は低いが、北米や東アジアとの距離の遠さ、プレーレベルの低さにより、国際移動が抑えられると思われる。  以下では、自国内にプロリーグを持たない、つまりは、プロ選手として野球をするには、国境を超える必要にある国々に主として注目し、野球の広がりについて述べていきたい。

欧州・アフリカへの拡大  野球のグローバル化研究の大家、アラン・クラインは、すでにサッカーが人気スポーツとして定着し、経済的にも豊かなヨーロッパでは、貧困から抜け出すツールとして野球競技が利用される中南米カリブ地域のような野球の定着、人気向上は難しいとしているが、イタリアでのプロ化もあり、プロ野球選手の総数は、前回2008年調査時の35人から169人と激増している(ナショナルチームレベルではヨーロッパ屈指の強豪国、オランダにも国内リーグがあり、強豪チームはほとんどすべての選手とプロ契約を結んでいるが、リーグじたいはプロアマ混合の「セミプロ」状態であるので、本稿では調査の対象とはしなかった)。また、MLB球団がマイナーの有望株を送り込むウィンターリーグにおいてもオランダ、ドイツ人選手が確認できることから、この地域におけるMLBのスカウト網は整備されつつるようにみえる。  しかしながら、プロ選手輩出国じたいは、9か国から10か国と微増であり、自国リーグでプレーするイタリア、サンマリノ人選手の数を除けば、選手総数は40人と前回調査時と大差はない。イタリアン・ベースボール・リーグは、「本格的なプロ化」を目指したものの観客動員にも苦しみ、2018年シーズンより以前のセリエAのような選手とのプロ契約を必ずしも義務付けない「セミプロ」化に戻る方針という。このことを考えると、北米や東アジアへの人材供給地としてのこの大陸への野球普及は今後もなかなか進むことはないと思われる。  クラインは一方、ヨーロッパへの野球普及について、比較的貧しく、野球を競技することが貧困脱出の手段となりうる可能性をもつ東欧に野球普及の期待を抱いている。その言葉を裏付けるように、2008年にはロシア、チェコの2か国からしか出現していなかったプロ選手は、2015年にはチェコ、リトアニア、ポーランド、モルドヴァの4か国に拡大している。しかしながら、ヤンキースと2013年に契約を結んだというポーランド人・アルトゥル・ストルザルカは、この2015年と翌年にルーキーリーグでリリーフとして計21試合に登板し3勝2敗、防御率5.28という成績に終わると、北米球界を去っている。2017年シーズンは日本の四国アイランドplusでプレーし、20試合で1勝3敗、防御率3.88を記録している。また、2012年にイタリアで行われたアカデミーからツインズとの契約を勝ち取ったモルドバ人投手バディン・バランもまたこの年、リリーフで1試合、1イニング2/3を投げたのみ(無失点)に終わっている。  クラインの予言は、アフリカにおいてさらに正鵠を得たものとなっている。彼は、この大陸にドミニカ同様の野球の可能性を見出しているが、彼がその射程に置いた南アフリカ共和国出身のマイナーリーガの数は、2008年の4人から8人へと倍増している。さらに言えば、このうち、パイレーツと契約したギフト・ンゴエペは2017年シーズン、「アフリカ初のメジャーリーガー」としてデビューを果たしている。英語が公用語でもあるアフリカ一の経済力を誇るこの国が今後もこの地域の野球の中心地となり、人材供給センターとなる可能性は大いにある。  クラインが指摘する、MLBによるスカウティングの一環として流れのほか、アフリカには、開発援助としてのスポーツ普及の一環としてのトレンドも存在する。この活動は、とくに日本において盛んで、現在複数のNGOが現地野球連盟とともにアフリカでの普及活動を行っている。日米において独立リーグがその数を増やすなどプロのプレーレベルの下限が下がる中、その活動のひとつの結果としてプロ選手を送出することも起こっており、前回調査した2008年においても、日本の四国アイランドリーグ(四国アイランドリーグplus)にジンバブエ人選手がひとり在籍しており、2015年シーズンも調査時点においては、「練習生」扱いでロースターには入っていなかったが、シーズン終盤に、同リーグに西アフリカのブルキナファソ出身者が選手契約を結び「プロデビュー」を飾っている。彼らはともに日本のNGOが行った野球普及活動の結果来日したもので、今後も断続的にこのような日本の独立リーグへのアフリカ出身者の国際移動は見られると考えられる。

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